教授のご挨拶

子どもの未来に向けて、“Total Life Care, Tokai”

◆子どもの未来と“Total Life Care, Tokai”

 私たちは、健診や毎日の診療を通じて、子どもの健やかな成長・発達を手助けしています。それでも、慢性、難治性を呈する疾患は少なくありません。近年の臨床研究から、多くの成人の疾患が小児期の疾患と関連することがわかってきました。医療技術の向上により、難病の子どもたちが成人する機会も増えています。このような現状にあって、子どもたちが、大人になっても迷うことがないように、私たちは最新の医療技術に未来を見据えた診療計画を重ね、“Total Life Care, Tokai”を進めています。

◆総合診療医としての“Total Life Care, Tokai”

 小児科医は皆、総合診療医です。東海大学小児科では、人生の出発点から個人の健康に介入することに誇りと責任を持って、診療に未来を見据えたケアを重ねています。

(a)発症時から長期予後に関する評価を開始します。
  • ・乳幼児期からの予後評価法の臨床研究を進めています。
  • ・全ての疾患に合わせた長期予後の患者教育を行っています。
(b)小児に特有な疾患は継続して治療します。
  • ・長期的な合併症への対応も考慮しています。
  • ・症例ごとに、極・長期間の治療計画の作成を行います。
(c)内科への理想的なトランジション(移行)を行います。
  • ・成人に移行する疾患の経年的な評価を行います。
  • ・内科への移行プログラムを患者さんとともに作成します。

◆戦略としての“Total Life Care, Tokai”

 小児科医は患者さんの人生の開始点から未来を俯瞰します。だからこそ、医療戦略として、私たちはTotal Life Care, Tokaiを推し進めています。
 例えば、近年、成人の難病であるCOPD(たばこ病)は、小児喘息から移行する症例が高率であることが報告されています。喘息は全人口の6%以上を占める難病ですが、小児喘息の半数以上が成人に持ち越されるという報告からも、大きな問題と思われます。これまで、乳幼児喘息の信頼できる診断法がなかったため、喘息の早期診断は難しく、発症してからも患者教育が困難でした。当科では、世界に先駆けて完成させた肺音解析の技術(Tabata H, Respir Invest, [2016], Enseki M, Respir Invest, [2017])により、優れた診断基準を作成すべく、研究を続けています。既に完了した多施設共同の前方視的長期観察研究(厚生労働省研究班、代表 望月博之)から、小児喘息には2つの発症原因の異なるタイプが存在することがわりましたので(Mochizuki H, Am J Respir Crit Care Med, 2017)、これに呼応した正確な診断・分類を軸にした躍進が期待されます。

◆学生、研修医の皆さんへ

 小児科は子どもの疾患すべてに対応していますので、その数も膨大です。さらに、複雑な病態を有する疾患、診断基準のない疾患が数多く、知識をベースに全てを理解しようとすることは不可能と思われます。しかしながら、先入観にとらわれず、柔軟に視点を変えてみることで、正解への近道がみつかるかもしれません。
 東海大学には完成された研修システムがあります。小児の高度救命救急から血液、腎臓、新生児疾患、さらには呼吸器、アレルギー・免疫、循環器、内分泌、神経の各分野において、頼れるスタッフが指導にあたっています。実地医療での苛立ちや、さらなる研鑽への欲求は、研修される中で誰もが経験するものですが、各指導医の確かな医療技術、さらには小児科学に対する柔軟な精神に触れ、共鳴していただければ解決することも数多いと思います。私たちは、子どもたちと家族の皆さまの笑顔を糧とした小児科医ならではの充実感あふれる日々を提供いたしますので、この湘南の地で共に学んでいきましょう。

Total Life Care, Tokai We look into the future of child health

 健康であることは人生の基本です。こどもが健康に育っていくことを医学の専門家として支えていくのが小児科医の仕事でありそれについての学問が小児科学です。

 当たり前のことですがこどもは母親から生まれまず母親によって哺育されます。それを父親や同胞などの家族が支え、さらには関わり合う様々な社会によって守られ支えられて育っていきます。小児科医もそうした社会の一員にほかなりません。

 こども、特に赤ちゃんは小さく弱い存在ですが意外と逞しい面もあり、その回復力にはしばしば驚かされます。人生を始めて間もない時期に医学的にちょっと躓きかけたこどもの回復にちょっと手助けをしてあげる。立ち直ってしまえばその後もこどもはどんどん成長していき、さらに何十年も人生を楽しみ活躍してくれます。これはそのこども自身にとって大きなことであると同時に小児科医にとっても非常な喜びとやりがいを感じるところでもあります。

 人の一生は新生児・乳児として始まり成長して成人となりやがて年老いて終わります。しかし出生前であっても母親の子宮の中で生命は既に始まっており、さらにその前には生殖細胞を宿す母親、さらに父親がいます。すなわち生命の環は世代を継いで続いていきます。 小児期というのは、どんどん成長し変化していく時期であると同時にヒトの一生の中で最もクリティカルな時期(死亡率・罹病率の高い時期)でもあります。こどもの病気の起源は胎児期以前に遡ることも多く、その影響は成人期以後、さらには次世代までにも及びます。したがって小児科学では小児期だけでなくそれを超えた人の一生さらには次世代も含めた長期的視野に立っています。こう考えてくると小児科学は身近であり重要であるというだけでなく非常に興味深く奥深く魅力的な医学分野でもあることがわかります。

 「当院周産期センター新生児部門では「Good Start! Great Future!」を合言葉に以下の具体的な3本柱を核に診療と研究と教育に取り組んでいます。

  1. 1. 出生時のスムーズな呼吸・循環の移行
  2. 2. 新生児期からの良好な母子/家族関係の確立
  3. 3. 生涯健康を目指した早期乳児期

 出生とは児のガス交換器が突然に胎盤から肺へと変換する人生で最も‘苦しく’、‘危機的な’瞬間です。この時期をより自然な形で生理的に通過できるよう取り組んでいます。赤ちゃんを含む健康な家族への支援として早期からの母子接触と母乳哺育、家族を中心にした赤ちゃんに優しい環境とケア(Baby-Friendly, Family-Centered Care)のできる周産期新生児病棟を目指しています。発達期の栄養学的環境、微生物学的環境、種々のストレス環境などは成人期の病気と健康指標に大きく影響することがわかってきています(DOHaD: Developmental Origins of Health and Disease)。生涯健康の視点に立って臨床と基礎の両面から研究と診療を進めています。

 「之を知る者は之を好む者に如かず」「之を好む者は之を楽しむ者に如かず」と言われます。物事は楽しくやれるのが一番です。東海大学は連携各科の充実した附属病院と関連病院を有するのみならず多様な関連学部学科を擁する総合大学でもあります。この特徴を大いに生かして広い視点を持ち、未来と将来性に満ちた新生児医療に触れ、周産期学・小児科学をともに楽しみ勉強していきましょう。

Good Start!Great Future!最初が大事!

東海大学小児科

〒259-1193
神奈川県伊勢原市下糟屋143
東海大学医学部専門診療学系小児科学

TEL:0463-93-1121(代表)
FAX:0463-94-3426

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